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広島家庭裁判所呉支部 昭和33年(イ)60号 審判 1958年7月28日

申立人 田宮洋子(仮名)

相手方 田宮利男(仮名)

主文

一、申立人と相手方は離婚する。

二、長男郁夫の親権は申立人において之を行うこと。

三、申立人は長男郁夫を施設に収容するため呉児童相談所にその手続を行うこと。

四、申立人と相手方は郁夫の入所する施設に対し郁夫入所の日より出所する日迄各自毎月金一、〇〇〇円宛也を支払うこと。

理由

申立人は相手方と離婚する、長男郁夫の親権は相手方とする趣旨の調停を求め、その原因として、申立人と相手方は昭和二八年○月婚姻し以来同棲生活をしてきたが、相手方は飲酒泥酔して申立人を殴打するばかりでなく、飲酒のため生活費を浪費し毎日の生活も困難であるので申立人はやむなくパチンコ店に働き家計を援けつつあつた昭和三一年○月頃、帰宅の途中相手方に出会い口論となつた際、相手方が申立人を殴打し頭及び顔に負傷し○○病院に入院加療三週間に及んで以来申立人は恐怖の余別居して今日に至つているが相手方は強迫の手をゆるめない情況で到底夫婦生活を継続し難いと謂い、相手方は申立人主張の事実を否認するけれども離婚については異議なくただ子の親権監護は申立人において行うことを主張して譲らない。本調停委員会は双方に対し懇切に調停を試みたが結局子の親権及び監護者を何れにするかの点で双方の意見が一致せずまた双方共に幼児を監護しつつ生活することの困難な事情を認めた。そこで呉児童相談所に折衝しこれを養護施設に収容することの内諾を得たので、この趣旨において当事者間に調停を進行させていたところ相手方は第五回調停期日以後期日に出頭せず、家庭裁判所調査官の出頭勧告に対しても出頭を約しながら期日に出頭せず調停を成立させることができない。そこで当裁判所は調停委員佐々木畏三、北林美知子の意見を聴き、一切の事情を斟酌して家事審判法第二四条により主文の通り審判をする。

(家事審判官 太田英雄)

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